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アジア・アートマネジメント会議Vo.5
去る1月19-20日に、大阪市立大学都市研究プラザ主催の、アジア・アートマネジメント会議がバンコクで開催されました。
これまでは、大阪市立大学で開催されていたのですが、今回から、アジア各国の大学と連携で開催することになるそうで、今年は、チュラーロンコーン大学(จุฬาลงกรณ์มหาวิทยาลัย)と連携、バンコクでの開催となったそうです。
チュラーロンコーン大学は、タイでも最も古く権威のある大学(ウィキペディア情報)だそうで・・・ここには芸術学部もありました。
アジア・アートマネジメント会議のことは昨年も紹介させていただきました(http://artsnpo.exblog.jp/10837817/)が、本会議は、アジア圏においてアートに従事する研究者や専門家のネットワークづくりを目的に開催されておられ、大阪市立大学主催ということもあり、関西のアート関係者がおもに参加、今回で5回目になります。

不肖未熟な僕ではございますが、アートNPOの概況についてご紹介する機会をいただき、研究者やアーティストの方々を前に報告してまいりました。

初日は、スタディーツアーがありました。
まずはじめにクロントイ地区のNGOを訪問。クロントイ地区には、タイ全域に数多くあるスラムのうち、バンコク最大のスラムがあります。ここは、バンコク首都圏の大規模な開発に伴う労働者が、またタイ東北の貧しい農村部からの出稼ぎなどでやってきた低所得者の方々が暮らしているということです。
通りでよく見かける繁華街の屋台で働いている人たちは、このようなスラムに住んでいる人も多いとのことでした。
ここでもドラッグの問題やエイズ、犯罪といった社会問題が山積していると伺いました。
大学もクロントイ地域の調査をしているそうで(当然といえば当然だが)、このコミュニティをよく知る研究者の方に案内をしていただくことができました。
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水に浮かぶゴミ。衛生状態がいいとは思えません。。。
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このスラムを訪れたのは、ここで活動しておられるNGOを訪問するため。
僕たちが訪問したドゥアン・プラティープ財団(http://www.dpf.or.th/jpn/index.html)は、「生き直しの学校」を建設し、里親制度など就学といった子どもたちの教育環境改善や人材育成、エイズ予防プロジェクトや食育といった健康管理事業、生活協同組合など社会福祉事業、自治消防団の設置(豊中ロータリークラブと書かれた消防車が停まっていた)などなど、さまざまな取組みをされておられる財団です。
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また、劣悪な生活環境にある子どもたちが、表現を通して精神的な問題に向き合うとともに幅広い視野をもった大人に育ってもらいたいと、芸術プロジェクトも実施されておられました。
このような解決の非常に困難な状況を前に、我々アートの周辺領域に携わる人間にいったい何ができるのかと考えさせられます。
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当初は子どもの教育を中心に活動されておられたそうですが、1992年には、化学薬品タンクの爆発事故があり(もともとは日本企業のタンクだったそう)、4名が死亡、いまも多くの方が後遺症に悩まされておられるとのことで、住民に対する救済や生活改善にも取り組むようになったそうです。
一番関心したのは、財団に海外担当がいらっしゃること。
日本人のボランティア・ガイドさんもいらっしゃって、全部日本語で説明してくださいました。
また、日本の支援者に向けた活動レポート「ほほえみ」を定期発行されていたりと、キャンペーン活動にもちゃんと取り組んでおられます。
ウェブサイトにも日本語サイトがあり、非常に充実しています。
多くの方がこの財団の活動を日本語でレポートされておられるので、詳細はウェブサイトをご覧いただくとして、こういうメディアの取り組み方は非常に参考になります。しかも、ちゃんと作られてはいるんだけど、必要最低限な情報と媒体に集約されていて、お金はかかってないように見えます。
アドボカシーもさることながら、このように、サポーターへの情報提供(アカウンタビリティ)、寄附キャンペーンといったことはNPO組織マネジメントにおいて必須なのだということを、改めて知ることができました。

つぎに訪問したのは、Nang Loeng Market近くのコミュニティ。
ここには寺内町のような感じで、寺を中心にした一画があり、そのコミュニティの方々と一緒に取り組んでおられるアーティストたちの活動を見ることができました。
全て英語でのツアーだったので、20%くらいしか理解できなかった(えっ?)のですが、バンコクでも現存する最も古いコミュニティの劇場が老朽化と地域の再開発のために取り壊されようとしており、その保存活動を進めているということです。
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この劇場は王立。ちなみに、タイでは多くの施設が王立であったり、王家の土地であったりします。(当然というかなんというか、"タイ王国"だから)
彼らは、コミュニティにとってこの劇場がどんな役割を果たして来たか、また、バンコクでももはやこのような劇場は3つまで減っており、文化史を物語る貴重な建物であると訴えているそうで、王家にも働きかけをしていこうとされています。
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このような取組みは、日本でも多くのアート系・まちづくり系NPOが取り組んでおられるし、フォーラムでもトピックになることが多いので、僕も参考になります。
このときのツアーの案内をしてくれた映像作家のKamol Phaosavasdiさんは、コミュニティの方々に地域のことをインタビューした映像を撮っておられます。映像の核は、このコミュニティに住み、この劇場でも踊っていた経験があるというタイ舞踊の名手のおばぁさんのお話し。いろんな方の声を通して、地域の歴史やストーリーが掘り起こされていました。
この映像の話しを聞いたときに、ふと、近江八幡のひょうたんからKO-MAさんたちの「ほんがら」を思い起こしました。
このときの映像やインタビューは、Living Museum [Between]というDVDにまとめられています。
たいへんうつくしい映像で、見ているだけでも引き込まれます。
この記録DVDをいただくことができたので、2月15日にココルームで開催する報告会で上映できればいいなと思っています。お楽しみに!

また、このあたりのコミュニティで、築100年を超える古民家を改築してアートスペースを運営している方を訪問。
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ここでは、コミュニティの子どもたちを対象にしたワークショップに取り組んでおられるほか、古民家はゲストハウスとしてアーティストが泊まれるようになっていました。
肝心のマネジメントは、いまひとつ良くわからなかったのですが、これはUKのスタディツアーでも、日本の団体訪問でも同じで、説明を受けたからといって、そう簡単にマネジメントの仕組みは分からんもんです。
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おなじく同コミュニティ内にある、子どものための図書館。冷房が効いているので、子どもたちが涼みにやって来るそう(笑)。
子どもの居場所づくりの役割も果たしているということですね。

スタディーツアーは、このようなコミュニティ・ベースドな活動視察のほか、BACC(http://www.bacc.or.th/)の館長による館内ツアー、Tang Gallery(http://www.tangcontemporary.com/)やNam Thong Galleryといったコマーシャル・ギャラリーの運営についてお話しが聞けるなど、バランスのいいツアーが組まれていました。
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そして翌20日は、チュラーロンコーン大学で会議です。
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これが今回の会場。1階は大講堂になっていて、AAMは3階の会議室が会場に。40人も入ったらいっぱいになるような小さな会議室ですが、形がユニークで、円形会議室ならぬ多角形の会議室。モニターがどの席からも見えるようになっており、同通ルームもありました。
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会議前、ペンが見当たらなくてカバンの中をガサゴソと探してしていたら、ラオスの夜店で買ったハートのストラップがあったので、マイクをデコレーション。
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なんとか無事発表も終えました。たくさんの質問をいただくことができましたし、なかでも若いアーティストたちがあとで質問に来てくれたのが嬉しかった。
個人的には、タイ側のプレゼンターで、昨年のジェネシスで来日し、NPO法人S-AIRに滞在されていたArt Pataveeくんのプレゼンがたいへん興味深かったです。
彼らの活動は、ココルームの原田さんがチェンマイまで行ってみてきたので、その報告を楽しみにしたいと思います(2月15日のカマン!メディアセンターでの報告会で聞けます)。

この日の締めは、タイといえばやっぱりニューハーフショー。(タイではレディボーイと言ったりするみたい?)
なかでも有名なアジアホテルの「カリプソ」を鑑賞。
なんでこれに来たかって?
なんとなんと、横トリやF/T、京都国際舞台芸術祭でも来日していたピチェ・クランチェンさんの演出なんだそうですよ!!
今年中には新しい演目に変わるそうですので、タイに行かれる方はぜひどうぞ(笑)
みなさんほんとうに、"美しい"です。
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会議も終わり、翌日ひとりで博物館にいこうとタクシーに乗り込んだら、タイ名物の大渋滞に遭遇。
いつまで経っても動きません。
さすがに渋滞にしては変だなと、思っていると、実は赤シャツ隊のデモに遭遇したんでした。
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タクシーの運ちゃんは「メニーメニープロブレム」と何度も言ってましたが、あきらめ方も上手。その間、メーターはどんどん加算されていく(苦笑)
運ちゃんに「赤シャツに参加しないの?」って聞いたら、「ミドル」と言ってたのが印象に残っています。
近寄らない方がいいよと言われたけれど、遭遇しちゃったものはどうしようもない。
博物館に行けなくなったので、タクシーをあきらめて、赤シャツ隊のデモを眺めながら、知らないまちを徒歩で延々歩いて戻りました。びっくりするほどデモの列が長く、いったいどれだけの人が参加してるのかと驚くばかり。
タイの伝統的な音楽を流す車もあれば、アゲアゲなクラブサウンドを爆音で流す車もありと、さながらパレードのフロートのようでした。
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タイ報告会をカマン!メディアセンター@西成・釜ヶ崎で開催します。
2月15日の14時頃から19時頃まで。
昼間からビールを呑みながら、ものすごくゆるゆると開催しますので、のんびりだらだらするつもりでいらしてください。多少のことはマイペンライで。苦情は受け付けられませんのであしからず。
by artsnpolink | 2011-02-08 00:30 | ●事務局つれづれニッキ
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